Microsoft IQとは?Work IQとWeb IQで見る、AI活用の前提の変化
2026.06.30
2026年のMicrosoft Buildで発表された「Microsoft IQ」は、AIの活用方法が次のフェーズに進んだことを象徴するトピックのひとつです。
最近は「AIをどう使うか」だけでなく、「AIにどんな情報を持たせるか」が重要になってきていると感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、その前提となる「Microsoft IQ」という考え方と、その中核を成す「Work IQ」と新たに登場した「Web IQ」について整理していきます。
Microsoft IQとは何か
まず押さえておきたいのが、「Microsoft IQ」は製品名ではないという点です。
これは、Microsoft 365 CopilotやAIエージェントが活用する“知能レイヤー”の総称であり、「AIが組織をどう理解するか」という前提を定義するものです。少し噛み砕くと、Microsoft IQとは「AIの回答や判断の質を左右する、背景情報の整理の仕方」です。
Microsoft Build 2026時点では、このMicrosoft IQは以下の4つの要素によって構成されています。
• Work IQ:人や業務の文脈
• Fabric IQ:業務データの構造と関係性
• Foundry IQ:社内文書やルールなどの知識
• Web IQ:Web上の最新情報
ポイントは、これらが製品ではなく「情報の種類を分ける枠組み」という点です。
たとえば、同じ「顧客に関する情報」であっても、メール履歴はWork IQ、売上データはFabric IQ、契約ルールはFoundry IQ、業界ニュースはWeb IQというように、情報の性質に応じて扱いを分けている点が特徴です。
この整理が必要とされる背景には、AIの利用方法の変化があります。従来のAIは「聞かれたことに答える」単発型が中心でした。一方で最近は、複数の処理を連続して行う“エージェント型”も登場してきています。
このとき重要になるのが、「どの情報を参照しているのか」です。インターネット上の公開されている情報を見るAIと、社内データまで参照するAIでは、同じ質問でも結論が変わる可能性があります。
つまり、AIの性能だけでなく「情報の設計」も同じくらい重要になっている、これを整理するための考え方が、Microsoft IQです。
▼Microsoft IQの構成イメージ

Work IQとは:業務文脈を扱うための仕組み
Work IQは、Microsoft 365上のデータをもとに、AIが「仕事の文脈」を理解するための仕組みです。具体的には、ファイル、メール、会議、チャットといった日常的なデータに加え、それらの関連性や履歴を含めて扱います。
Work IQは以下の3つの要素で説明されています。
• Data:ファイルやメールなどの業務データ
• Memory:個人の作業傾向や関係性
• Inference:それらを基にした推論
ここがポイントで、Work IQは単なる検索ではありません。データを文脈としてつなぎ、そこから意味を推測するところまで担います。
たとえば「この資料作っておいて」と依頼されたとき。単なるファイル生成ではなく、どの会議の流れか、誰が関係者か、過去にどんな議論があったか、こういった前提を踏まえたアウトプットが求められますよね。Work IQは、このような背景情報をまとめて扱うことで、AIが“毎回ゼロから指示を受けなくてもいい状態”を作り出します。
Web IQとは:AIのための検索基盤
一方でWeb IQは、2026年に新しく発表された「AI向けの検索基盤」です。従来の検索は、人が結果を見て判断する前提で作られていました。しかしAIエージェントは、検索 → 情報収集 → 推論 を何度も繰り返します。そのためWeb IQは、AIがそのまま使える形で情報を返す設計になっています。
Web IQは、以下のような特徴を持っています。
• Webページやニュース、画像、動画などの情報を対象とする
• AIがそのまま使える形式で情報を返す
• 繰り返し検索と推論に耐える設計
公式発表では、Web IQはBingの検索基盤をもとにしつつ、AI利用に合わせて再設計されたものと説明されています。特に重要なのは、「リンク一覧ではなく、根拠として使える情報を返す」という点です。
また、AIは学習済みの知識だけでは、最新の情報に対応できません。
例えば、最新の法改正、市場動向、競合のニュースといったような内容は、外部から取得する必要があります。Web IQは、この“外部情報への接続部分”を担う役割です。
Work IQとWeb IQの関係
この2つは対立するものではなく、役割が明確に分かれています。
• Work IQ:社内の業務データや文脈
• Web IQ:社外の最新情報
実務では、この両方が揃って初めて意味のある判断ができます。たとえば市場動向や法規制の変更、競合の動きなどは社外に存在するためです。このような場合、Work IQで社内の文脈を把握しつつ、Web IQで外部情報を補完することで、初めて十分な情報が揃います。
Microsoft IQは、このように異なる情報源を役割ごとに整理し、AIが同時に参照できる状態を前提として設計されています。
また、Microsoft Build 2026では、AIは単独の機能としてではなく、「エージェントやアプリケーションが連携するシステム」として扱われるようになっていることが示されました。
この中でMicrosoft IQは、AIが利用する情報の粒度と範囲を整理するための枠組みです。Work IQやWeb IQは、その中の一要素であり、特定の機能というよりもAIが参照する情報の種類を定義するための概念として理解する必要があります。
AIの出力内容は、利用する情報に大きく左右されます。そのため、どの情報を、どのような形でAIに渡すかという設計は、モデル性能と同じかそれ以上に重要になります。
まとめ
Microsoft IQは、AIの機能そのものではなく、AIが参照する情報をどう整理するかという設計思想です。
そして今後のAI活用では、モデル性能、プロンプト、データ整備に加えて、「情報構造の設計(どのIQをどう使うか)」が重要なポイントになってきます。
※参考:
Microsoft IQ documentation | Microsoft Learn
Microsoft Build 2026 recap: vision, launches, and top sessions - Microsoft for Developers
Announcing Microsoft Web IQ | Bing Search Blog
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